私たちの研究内容

廣畑の臨床専門分野は循環器内科です。

岡山大学における研究では基礎研究を主に、動脈硬化などの循環器疾患から、がんの血管新生、変形性関節症まで、下にあげるようなさまざまなトピックに取り組んでいます。一人一人が自分のプロジェクトを持つことが多いのが当研究室の特徴で、実験に慣れるまで大変だと思いますが、皆それぞれ一所懸命に実験に取り組んでくれています。

 

現在進行中の研究プロジェクトは以下のとおりです。

細胞外分泌小胞を介したマイクロRNAによる情報伝達機構の解明

抗がん剤から心臓を守る 新たな治療薬の研究

ADAMTSノックアウトマウスの解析

非アルコール性脂肪肝(NASH)進展に関する新規治療戦略

X線や造影剤を使わない新しい冠動脈治療法の開発

マトリックス分解酵素に作用する新規化合物の探索

肺線維症への治療挑戦

詳しい内容は右のリンクよりご覧ください。

当研究室のこれまでの研究成果の紹介は、このページの下をご覧ください。

細胞外マトリックス分解酵素ADAMTSの発現制御メカニズム解明

ADAMTSは分泌型のメタロプロテアーゼです。

当研究室では、その中でも細胞外マトリックスと呼ばれるタンパクの分解にかかわるADAMTS(ADAMTS-1,4,5,9)について、分子生物学や細胞生物学・動物モデルなどを駆使しながら、最先端の手法にも挑戦して最新の研究を進めています。

循環器疾患から、がんや動脈硬化、関節炎など幅広い病気を研究対象としています

学生たちが欧米など世界各地や全国レベルの学会で成果を毎年発表しています。

変形性関節症ではたらくADAMTS/MMPを制御する

大月孝志非常勤研究員を中心に企業の受託研究も交えて進めてきました。炎症性サイトカインによって軟骨に誘導されるADAMTSsやMMP-13の発現を抑制する手法とその分子機構を解明しています(J Orthop Res. 2018 Dec; 36(12): 3247-3255. Exp Cell Res. 2019; 383(2): 111556.)。

ADAMTS1は低酸素環境で誘導される

 ADAMTS1は金沢大学の久野先生・松島先生らが最初に発見したADAMTSです。私たちはADAMTS1が急性心筋梗塞で短時間に発現誘導されることをまず発見しました。次にHIF-1αという低酸素で働く転写因子がプロモーターに結合して発現を誘導する分子メカニズムを報告しました。さらにこれを応用した病気の新しい診断法や遺伝子導入法を開発して特許を取得しました。(J Biol Chem. 2009; 284(24): 16325-33. Cell Biol Int. 2011; 35: 1-8 特許第4195492号 「急性虚血性疾患の診断薬」 特許第5493231号「新規DNA断片およびその用途」 特許第5651890号「再灌流療法の治療効果を判定するキット」 欧州特許 #2248894 米国特許 US8,865,669 B2)。

がん浸潤におけるversicanの役割

プロテオグリカンであるバーシカンはADAMTSの基質です。がんの間質にバーシカンの発現が強く出ると予後が不良であることが知られています。私たちはがん組織中のバーシカンがどこから来ているのか詳しく観察しました。(Sci Rep. 2017 Dec 8; 7(1): 17225.)

心筋梗塞を軽減する新治療

ヘルスシステム統合科学研究科妹尾昌治教授との共同研究です。心臓に悪影響を及ぼすと言われるタンパクが心筋梗塞から細胞を守る薬になるかもしれません(特許第5467742号「ECPを有効成分とする左室リモデリングの予防及び治療剤」)

ADAMTS1によるがん休眠療法

ADAMTS1は分解酵素以外にさまざまな機能を持っています。稲垣純子助教との共同研究において、酵素活性部位を持たない人工ADAMTS1の機能を解析したところ、血管新生を抑制する働きを持つことを発見しました。さらにADAMTS1はVEGF-Cと結合してリンパ管新生も抑制することを見出しました。ADAMTS1は上手く使えばがん休眠治療に応用できる可能性があります。(Cancer Sci. 2012; 103(10): 1889-1897. Exp Cell Res. 2014 May 1; 323(2):263-75)

ADAMTS9に関する研究

ADAMTS9はバーシカンやアグリカンを分解します。発達の段階で重要な役割を担っておりそのノックアウトマウスは胎児のうちに死んでしまいます。

私たちは軟骨細胞において炎症性サイトカインによってADAMTS9が強く誘導されることを発見し、そのメカニズムを報告しました。(Arthritis Rheum. 2005; 52(5): 1451-1460. Mol Cell Biochem. 2009; 323(1-2): 69-79.

基底膜成分によるがん休眠療法

分子医化学時代に初めて日本国特許を取得した、バンダービルト大学Billy Hudson教授らとの国際共同研究です。分子生物学的な手法とアイデアを駆使して新しい治療法を提供することができました(FASEB J. 2006; 20(11): 1904-1906.)。先に投稿した別のジャーナルには何度もリバイスを要求されたあげく最後にrejectという経験もしました。